ASMRで心拍数が下がる、科学が証明した話。

5 mins

「ASMRってただの気のせい?」→科学が「違う」と証明した話。

出典:Poerio et al. (2018) "More than a feeling" / PLoS ONE

どんな研究?

シェフィールド大学の研究チームが、ASMRが本当に感情や身体に変化をもたらすのかを、大規模オンライン実験と実験室での生理測定、2つの研究で検証した論文。

何がわかったの?

① チクチク・ゾワゾワは本物だった

ASMR動画を見た人のうち、ASMR体験者だけが「チクチクする感覚(ティングル)」を有意に多く報告した。コントロール動画では同様の差は見られなかった。つまり、気のせいでも思い込みでもない。

② 心が落ち着く、でも同時に高まる

ASMR体験者はASMR動画を見た後、興奮感と穏やかさの両方が高まり、ストレスと悲しみが低下した。リラックスしながらもどこかワクワクする、あの独特の感覚は実際に起きていた。

③ 身体にも変化が出た(ここが重要)

ASMR体験者はASMR動画を見ている間、心拍数が平均約3.41bpm低下し、皮膚電気反応(興奮の指標)は上昇した。

リラックスしながら、でも感覚は研ぎ澄まされている——この矛盾した状態が、ASMRの正体かもしれない。

④ 人とのつながりも感じる

声ありのASMR動画を見た後、体験者は「他者とつながっている感覚」も強まった。誰かにそっと寄り添われているような感覚、あれにはちゃんと根拠があった。

⑤ エロいわけじゃない

どちらの研究でも、ASMR動画を見ても性的興奮は上昇しなかった。よく言われる誤解だけど、科学的にはっきり否定されている。

よく効くトリガーTOP5(813人のデータより)

最も多く報告されたトリガーは、ソフトスピーキング(74%)、髪を触られる・ブラシがけ(73%)、囁き(70%)、近くでの個人的な注目(65%)、ヘアカット(56%)だった。

まとめると

ASMRは「なんか好き」じゃなくて、心拍数を下げ、穏やかさと興奮を同時に引き出す、生理的に実在する体験だった。研究チームは、この心拍数の低下幅は、心臓病患者への音楽療法の臨床試験と同程度であり、不安への介入よりも大きいと指摘している。

沼るのは、脳と身体が正直なだけ。


引用文献:

Giulia Lara Poerio1 *, Emma Blakey1 , Thomas J. Hostler2 , Theresa Veltri1. More than a feeling: Autonomous sensory meridian response (ASMR) is characterized by reliable changes in affect and physiology. PLOS ONE, 2018.

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「ASMRは脳と身体に何をしているのか?」科学が計測した話。


出典:Seifzadeh & Kostek (2024) "Exploring the technological dimension of ASMR-induced physiological responses" / PeerJ(DOI: 10.7717/peerj.17754) グダンスク工科大学(ポーランド)

どんな研究?

ASMRによるティングル(ゾワゾワ感)はこれまで主に主観的な報告に頼ってきたが、近年はEEG(脳波)・fMRI・心拍数・皮膚電気反応・アイトラッキングなどの計測技術を使って、ASMRが脳と身体に与える変化を客観的に調べる研究が急増している。この論文はそれらの研究を網羅的にまとめたレビュー論文です。

脳波(EEG)で何が見えた?

ASMRを体験した後、脳波を再評価すると改善が見られた。特にティングルを体験した人では、T6チャンネルのアルファ波が有意に低下した。

アルファ波の低下は「脳が単純にぼーっとしているのではなく、何かに積極的に反応している」状態を示します。つまり、リラックスしながらも感覚が研ぎ澄まされている——あの不思議な感覚に、脳波レベルの裏付けがあった。

心拍数・皮膚電気反応でも変化が

ASMR動画を1回視聴するだけで、心拍数がベースラインと比較して有意に低下した。一方で皮膚電気反応(興奮の指標)は上昇した。

「落ち着いてるのに、感覚は冴えてる」という矛盾した状態が身体でも起きていた、ということ。

不安への効果も確認

ASMR体験者は動画視聴前に有意に高い不安レベルを示していたが、視聴後にその不安が有意に低下した。

もともと不安が強い人ほど、ASMRの効果を受けやすい可能性があるということです。

音楽・自然音と何が違う?

音楽や自然音への脳波反応がアルファ波・シータ波の上昇(リラックス・感情的関与)で特徴づけられるのに対し、ASMRでは前頭部・頭頂部でのベータ波増加と神経接続の強化が見られ、これはASMRが独自の神経生理学的メカニズムを持つことを示唆している。

つまり、ASMRは「ただのリラックス音」とは脳の反応パターンが根本的に違う、ということ。

まとめると

計測指標

ASMRで起きたこと

脳波(EEG)

アルファ波低下・ベータ波増加

心拍数

有意に低下

皮膚電気反応

上昇(感覚覚醒)

不安レベル

視聴後に有意に低下

睡眠の質

改善の可能性あり

沼るのは脳の構造上、しかたない。科学がそう言ってる。

ブログ用に図解化したり、前回の研究まとめと並べて「研究シリーズ」にすることもできます🐾